漆についてあれこれ。

漆についてあれこれ書いてみたいと思います。

うるし

漆は言わずと知れた天然塗料ですが、塗料として用いられるようになったのは縄文時代からです。漆の産地は日本、中国、東南アジアなどですが、現在の日本では中国を主とした海外からの輸入漆が約99%を占めています。このようなことから、漆掻き職人(漆を採取する人)もごくわずかな人数になってしまいました。

かぶれ

「うるし」と聞いただけで、かゆくなる人がいるくらい「漆 = かぶれる」というイメージがありますね。漆の木が外敵によって傷つけられた傷口を守るために出す漆に含まれるウルシオールがかぶれの原因です。漆を塗る職に就いたものの、このかぶれによって泣く泣く別の職種を選ばざるを得ない人もいるくらいです。(かわいそうですが…)

接着剤

漆は塗料としてだけではなく、接着力が優れているため接着剤としても古くから使用されています。陶磁器の割れや欠けの補修にも用いられます。貝が貼られている漆器では、膠(にかわ)を使用したものだとはがれてきているものが多いです。やはり、漆を使用したものの方が長持ちしますね。

安全性

環境や人体に影響を与える有機溶剤と違い、伝統的な自然素材である漆の安全性が見直されてきています。また、漆の欠点の一つに紫外線に弱く紫外線が当たるとボロボロになっていくということがありますが、考え方によってはちゃんと自然に、土に戻っていくとも言えますね。

その他

このコラムを書いている私は、自家製の漆を塗ったお猪口で晩酌をしていますが、年数が経つにつれて漆が"透(す)いてくる"(黒の漆の下に塗ってある朱の漆が徐々に明るく見えてくる)のを見るのはなんとも言えないものがありますね。これが楽しみで真夏でも"熱燗"です。

あっ、余計なことでした…。

漆器は高いというイメージがありますが、価格に占めるかなりの割合が工賃です。趣味でされる分には"木地"を購入されご自分で塗られれば、原価で仕上がりますのでこの機会に漆を楽しまれてみてはいかがでしょうか?

「そんな簡単に言うけれど、漆って …」

という方は、漆に触れるきっかけとして検索エンジン等で「拭き漆(ふきうるし) 技法」などで検索してみてください。
これなら、木地(¥1.000~¥2.000程度)と生漆(きうるし:中国産50gで¥1,000以下)ときれいな布があれば楽しめるでしょう。
かぶれるのが心配な方は軍手などを使用して素肌を隠して作業してください。

そして、本格的(?)に漆を塗りたくなれば少しづつ道具をそろえていかれればよろしいかと思います。

漆器作りに興味はあるけれど、何から始めればいいのやら… とういう人には、阿部出版から出版されている「知る!使う!作る!うるしの器」がおすすめですね。

この本を読んでいるとおそらく、「あっ、これなら自分でも…」となるかも。
先ほどの、「拭き漆」についても掲載されています。2ページですが。
漆についての基礎知識~漆器作りのプロセスまで掲載してありますので、実際に漆器を作ることがなくても、漆器について幅広く学べるのもいいですね。1冊持っていても損のない本ではないでしょうか。

知る!使う!作る!うるしの器―あなたにもできる漆器作り(アマゾン)
うるしの器(楽天ブックス)

「 そして、もう少し本格的に「塗り」やいろんな「技法」を学びたくなれば、理工学社から出版されている「漆芸の伝統技法」はもう定番中の定番ですね。

漆に全く関わったことのない方が読まれるとかなり「しんどい」かもしれませんが、これからずっと漆器に関わっていくつもりなら絶対に持っていた方がいいでしょう。
各技法が詳しく解説されている云々もありますが、著者の漆に対する熱い想いは技法や作品に留まらず、漆に関わる職人さんへの愛情が感じられるとても良い本です。 著者が若くして亡くなられたというのは本当に残念なことです。

漆芸の伝統技法(アマゾン)
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そう言えば以前、松田権六氏の作品が見られるとのことで高岡市美術館へ行ったときに、この著者佐々木氏の作品も見ることができ、本当に感激しました。

長くなりましたが最後に。
漆器にご興味がある方に、次のサイトが何かの参考になれば幸いです。

「高岡漆器の勇助塗」(ホームページ)

この記事を書いている者が取材、執筆させていただきました。

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仏檀修理アドバイザー



富山県内仏壇店での仏壇製造・修理現場勤務をきっかけに独立。気がつけば20年以上お仏壇の修理・お手入れに携わってきました。

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